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プログレってどうなの? 5 ~ わかりません一派~キング・クリムゾン 2

店長日記セレクト
サード・イアーの密かな愉しみ~プログレってどうなの? 5

ーわかりません一派~キング・クリムゾン 2ー

以下、友人S、店主K。 


K「ディシプリン以降は後にするとして、セカンドは、ファーストと同じ時期に着想を得た曲が多いから、曲調とか似てる感じはあるんだけど、それでもやっぱりファーストとは違う事をやろうとしてる」。

S「というと?」。

K「う~ん、違う方向性に向かおうとしているとでも言うかな。まずもって、もうファースト的抒情性を追求しようとしてない。メロトロンの使い方も違うし、キース・ティペットを参加させてもっとインプロを持ち込もうとしてる。ギターはけっこうクラシカルだったりするし、ジャズとクラシックをサイケで括ってる感じなんだよ、上手くいってるかどうかは別としてもね。それは、マクドナルドやレイクが抜けた云々に起因するというよりは・・・・」。

S「フリップ自体の方向性がファーストとは違うと、なるほどね。で、ティペットは、この後アイランドまで参加するよね、あくまでゲストとしてだけど。フリップはメンバーにしたかったみたいね」。

K「うん、場合によってはグループごと参加してる。マクドナルドやレイク、ジャイルズ達がどうであれ、フリップはティペットとやりたかった。クリムゾンに必要だと思ったんじゃない?。リザードとアイランドなんて、ほとんどクリムゾンとキース・ティペット・グループの合作に近い」。

S「わりと無視されているよね、その辺。ファーストの抒情性とは全然違う情感だし、太陽と戦慄タイプのハードネスとも違うからね」。

K「そっちを基準にするから、ジャズ・ロック的でよくわかんない地味なサウンドってことになっちゃうのかな。サイケの精神に則ったわかりません一派ってことなら、クリムゾンの本質は明らかにこっちなんだけど・・・・ティペット自身の作品群も含めてね」。

S「そうね、正しくサイケなわかりません一派の暗さ。リザードやアイランドは、そういう英国的情感に満ちあふれてるよね」。

K「うん、とても心地好い。サーカス、リザード組曲、かもめの歌、アイランド辺りの美しさや、ハッピー・ファミリーやセイラーズ・テイルのカッコよさは、本当に素晴らしい」。

S「キース・ティペット・グループやセンティピード、オヴァリー・ロッジなどのティペットの作品群だって・・・・」。

K「素晴らしい、ジャズとか云々は関係ない。この人のピアノはいいよ、美しくてカッコいい」。

S「基本ジャズだけど、ロックのスピリットがあるよね」。

K「そうそう、でも、キース・ティペットは長くなるからまた改めてやろうよ」。

S「そうだな、ではアースバウンド」。

K「あぁ、カッコいいね、72年のUSツアー。もう解散状態で契約履行のためだけのツアーだったのに、何故か最初のピークの頂点」。

S「炸裂インプロの大爆発だよね、音質云々はこの演奏の前では問題にならない」。

K「色々聴いたけど、21世紀の精神異常者はこれが一番カッコいいな。ピオリアのボズやグルーンのウォーレスも凄い。セイラーズ・テイルがフェード・アウトしちゃうのは残念だけど・・・・」。

S「そうそう、まさにレッド・ゾーン、ず~っとブチ切れっぱなし」。

K「このライヴは、もうファーストとは全然違うバンドだよね」。

S「うん、エピタフや宮殿の抒情性は完全に相対化されている。フリップと他の3人の軋轢や溝とか、そんな文脈でばかり語られるけど、そうじゃない」。

K「ある種の変態じゃない?、メタモルフォシスのほうね。そして、太陽と戦慄に向けての72年後半のツアーで、また全然違うものに変態する」。

S「変態ね、いい表現かも知れない。同じ精神が核にあって、スタイルが大きく変化していく」。

K「そうだね。サウンドの変化が、ドラスティックというかダイナミックというか」。

S「でも一本筋は通っている」。

K「うん」。

S「で、太陽と戦慄からUSAまでなら・・・・」。

K「スタジオ盤なら暗黒の世界、圧倒的」。

S「断然そうだね、とにかく圧巻」。

K「突破口や暗黒の世界、人気ないけどね」。

S「この後、74年のUSツアーでしょう?」。

K「うん、アズベリー・パークのようなインプロが炸裂していた時期。73年後半のツアーから、暗黒の世界を挟んで74年のUSツアーまでが第2のピークだろうね」。

S「アズベリー・パーク、凄いよね。この74年のUSツアー中心のボックス・セットがリリースされるんだっけ?」。

K「うん、ライヴCD20枚にDVDAやBlu-Rayも加えた24枚組。ロード・トゥ・レッドだって」。

S「同じような感じの太陽と戦慄への道的ボックスは面白かったけど、全部聴くの大変そうだね、興味はすごくあるけど」。

K「ヴォリューム的にはちょっと過多だよね、全部ちゃんと聴くのには、けっこう時間がかかる・・・」。

S「一生かかるかも」。

K「はははは、それでもいいんじゃない。もし買ってしまったら、やっぱりもうしつこく聴くしかないよ」。

S「大量とはいえ、74年のUSツアーは気になるな、やっぱり」。

K「うん、気になる。この頃のインプロは凄まじいからね。悩ましいところ」。

S「第2のピークだからね。でも、クリムゾンはインプロ主体のバンドとして一般的に認識されてるの?。太陽と戦慄以降のほうが、スタジオ盤ですらむしろインプロ中心だと思うけど」。

K「そうだね、トーキング・ドラム、トリオ、突破口、暗黒の世界なんかは、ほぼ完全に丸ごとインプロだよね。他の曲もインプロ主体のセッションを重ねながら作曲している・・・・だけど、あまりそういう認識は一般的にはないんじゃないかな」。

S「何故なんだろう?」。

K「さあ、興味ないからかも」。

S「インプロに?」。

K「うん、わかりやすくないから」。

S「キャッチーじゃないってことか?」。

K「例えば、クリムゾンには、ある程度の毒とかえげつなさのようなものを求めてはいるんだけど、それはエピタフとか宮殿、21世紀の精神異常者、太陽と戦慄、レッド、放浪者とか辺りまでで、それ以上毒があったりダークだとキツいとか」。

S「あと、土曜日の本とか夜を支配する人々、風に語りてとかってこと?」。

K「ああ、その辺りもだろうね、かわりやすく奇麗だったり、カッコよかったりだからね。無論その辺りもいい曲には違いないけど、でも、繰り返しになるけど、クリムゾンはアルバム毎にサウンドが変態する希有なバンドの1つというか、様々な要素が混在する多様性のバンドだから、代表作とか代表曲とかってナンセンスなんだよ」。

S「それは、プログレ一般にもあてはまるるんじゃない?」。

K「そうね、プログレは本来幅広い音楽性を包括するジャンルだからね。何せブリティッシュだけで考えたって、フロイドやクリムゾン、ジェスロ・タルやファミリー、イエスやジェネシスが同じジャンルとして扱われるんだから。真逆とも言える多様なスタイルが混在している・・・・」。

S「全く違うものね、曲調からスタイルまで」。

K「うん、だからプログレのバンドって、結局多くは独立したわかりません一派で、それを外から勝手に集合として括ってる感じ」。

S「そうだね、必ずしもわかりません一派ばかりじゃあないけれど、わかりません一派は多いな。でも、せっかくの多様性を善とするジャンルなのに、代表作や代表的存在を作っちゃって、はい一派やいいえ一派として扱おうとしている」。

K「わかりやすくなるからね。でも、それじゃあポップスとして聴いてるのと同じになっちゃう。元も子もないというか、わざわざプログレとして聴く必要が・・・・」。

S「ないよね、まあどう聴こうが個人の勝手ではあるけど。洗練はあるけど変態のない、再生産される同じスタイルの繰り返し・・・・」。

K「そうそう、ウォール以降にフロイドが陥ったパターン」。

S「ディシプリン以降のクリムゾンもか?」。

K「基本的にはね。それ以前のようには変態出来なくなってる印象。ヴルームだけはちょっと突出してカッコよかったけど」。

S「あぁ、ヴルーム、いいね、ダブル・トリオ」。

K「ダブル・トリオの最初だからいいのかも。編成に無理があるもの」。

S「編成ですでにハミ出してるものね、各パートが複数いるって、どうしても歪みが・・・・」。

K「ツイン・ドラムってだけでも面白いことになるから、ベースとスティックも2人、ギターも2人だと・・・・」。

S「ある意味収拾がつかない、無理矢理になる。しかも最初だから本人達も面白がっている」。

K「そんな感じだよね」。

S「ディシプリン以降の3枚は、同じパターンの組替え再生産になっちゃって、94年の再編でダブル・トリオにして相対化しようとした」。

K「それがヴルーム」。

S「でもスラックとその後のツアーで、また再生産になっちゃった・・・・」。

K「うん、そうね。レッド以前を相対化したディシプリンと、ディシプリン以降を相対化したヴルーム以外は、同じパターンの組替え再生産に陥ってる」。

S「そのパターンが好きな人には、ある意味パラダイスかも知れないけどな。でも、フリップとしては・・・・」。

K「やっぱり不本意だったんじゃない?。だから、最後にはわざわざキング・クリムゾンにプロジェクトって付けて、名前まで相対化しようとした」。

S「キング・クリムゾン・プロジェクトね。印象としてはアイランドやリザードの頃の情感に近かったな」。

K「そうね、メル・コリンズがいるし、ジャッコのボーカルは柔らかいからね。でも、ノー・マンとかスロウ・エレクトリックとかの、いわゆるティム・ボウネス的情感のほうが近いんじゃない?」。

S「なるほど、そっちで相対化しようとしたのか」。

K「うん、ブリティッシュ的哀愁のあるいいアルバムなんだよね。でも、相対化は上手くいってない・・・・」。

S「だから引退・・・・」。

K「多分ね。もう無理だって思ったのかも知れない」。

S「いい歳だしね、もう十分な気もするし」。

K「でも、今後も何かしら発掘音源的なものは出す気あるんじゃないかな」。

S「あくまで現役引退だからな」。

K「これからも、リスナーには悩ましいものが出てくると思うよ」。

S「ティペット時代とか・・・・」。

K「音源は勿論、もし映像とか出たら凄いことだね」。

S「期待しないで、待つとしよう」。

K「はははは、期待しないでね・・・・」。



・・・・次回、著名所絡めたプログレ最終まとめの予定。

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