ドイツのビュロー・Bから、18年新規リマスター&デジパックでのリシュー。リシャール・ピナスはパリ出身のギタリストで、ジル・ドゥルーズの下で哲学を学んでいた大学在学中にスキゾを結成、スキゾを母体として発展したエルドンでの活動で何より知られていると思う。現在もソロやメルツバウとの共演等々で精力的に活動を続けるある意味孤高の存在。本作は、77年にフランスのコブラからリリースされたソロ名義ファースト・アルバムで、ラストのタイトル曲にフランソワ・オジェのドラムが入るが、他はピナス1人の即興演奏、プロデュースはマティエール・クリーズ。ムーグ55とアープ2600を中心に、自分の好きな音色を組み合わせて遊んでいる感じで、エルドン同様のSF的重厚さと暗さに満ち溢れていて、時折鳴り響く哀愁のメロディ的フラグメントもけっこう心地好い。基本的にはシンセ&エレクトロニクスの垂れ流し系というか、ダンサンブルではないシーケンサーやパーカッシヴなドラム空間に、ホワイト・ノイズやスペイシーなフラグメントが飛び交う、エレクトロニクス・ドローン&ミニマル的様相のサウンド。ほとんどギターを弾いておらずエルドン的炸裂も薄いということもあってか、巷での評価は芳しくないようだが、フィリップ・グラスに捧げられた3曲目や亜流エルドン的な5曲目辺りも含め、ピナス的終末感やエルドン的ダークネスは十分に担保されている。この冷たいSF感は、例えばクラウス・シュルツェ辺りにも通じる印象で、ダーク・アンビエント系エレクトロニカとして正しくサイケな好盤と思う。EUプレス盤
輸入盤
(Psyche/Electronics,Noise,Ambient / Digi-Pack CD(2018 Re-master) / Bureau B/German,EU)
Richard Pinhas(electronics)
Francois Auger(ds)
Produced by Matiere Crise
収録曲目
1.Rhizosphere Sequent
2.A Piece For Duncan
3.Claire P.
4.Trapeze/Interference
5.Rhizosphere