USAのNNAテープスから、デジパックでのリリース。ミズー(aka.イッセイ・ハー)はニュー・ヨークのブルックリンを拠点とするチェリスト兼コンポーザーで、ジュリアード音楽院を卒業後の23年から本格的な音楽活動を開始した。本作は、23年にリリースされたファースト・アルバムで、メンバーは、チェロ、サンプラー、テープ・ループ、シンセ等を駆使する、プロデュース兼任のミズーによる1人多重レコーディングを基本に、1曲でマリアBCがボーカルでゲスト参加。概ね、チェロを主体としたポスト・クラシカル方面というか、弓弾きのゆったりしたマテリアルをテープ・ループさせたドローン空間に、指弾きも交えたミニマリスティックなリフ&フレーズ、何かしらのサンプリング音やシンセのフラグメントを適時絡めた、まどろみ感十分のドローン・アンビエント調サウンドを展開。この、優しさと哀しさが入り混じった感じの、失われゆくものや事象を慈しむような静謐なドローン感は、現代の目眩く時間の流れの速さの中で、どこか生きずらさを感じている人や社会的マイノリティの人々の心に、そっと寄り添いながら包み込むような感触を放つ。チェロとスキャット調のマリアBCのボーカルが見事なハーモニーを成すラスト曲も含め、全体にいつのまにか盛り上がっていくドローン・サウンドスケープのダイナミズムが非常に上等で心地好く、時間の流れと空気の色が変わる、正しくサイケで優れて瞑想的な好盤と思う。葉祥明や長新太、五味太郎辺りのテイストが混ざったようなスリーヴも素敵。
輸入盤
(Psyche/Drone,Ambient,Electronics,Post Classical / Digi-Pack CD(2023) / NNA Tapes/USA)
MIZU(aka.Issei Herr)(cello,sampler,tape-loop,syn,electronics)
Maria BC(vo)
Produced by Rachika Nayar
収録曲目
1.Prelude (An Eternity Of Light)
2.Aubade (The Farewell Is A Beginning)
3.Aria (I Stand By The Reflecting Pool And Remember)
4.Elegy (As Soft Night Marches In)
5.Toccata (Kisses Of Earth)
6.Interlude (Sunken Citadels)
7.Serenata (To A Hidden Moon)
8.Fugato (Night’s Transfiguration)
9.Aveu (The Beginning Is A Farewell)