ドイツのトンツォーネン・レコードから、見開きデジスリーヴでのリリース。ヴェスペロはカスピ海北岸のアストラハン出身のグループで、アレクサンドル・クゾフレフとアルカジー&イヴァン・フェドトフ兄弟(ex.マート・ランダー,シーオーム,etc)が中心となって03年に結成された。オズリック・テンタクルズ・タイプと評されたスペイシーなポスト・ロック系を基調に、近年はチェンバー・ロック方面の実験色やカスピ海周辺のエスニック・ミュージックの要素も交えて活動、現在までに20枚以上のアルバムをリリースしている。本作は、21年にリリースされたアルバムで、メンバーは、クゾフレフ、フェドトフ兄弟、アレクセイ・クラブコフ、ヴィタリー・ボロジーンの5人編成を基本に、曲によってアレクセイ・イェシン、ソーニャ・ヴラーソヴァが適時ゲスト参加、マスタリングはエロック(ex.グローブシュニット)。シンセのノイズやSEのスペイシーさ、インプロも交えたインスト基本のオズリック・テンタクルズ的スタイルは概ね担保しつつ、ヴァイオリンやメロトロンを交えたプログレ的要素と、グースリ(ロシアの擦弦古楽器)、サズ、マンドリン、リコーダー、アコーディオン等々による少しアラビックなテイストを内包した古楽&エスニック的要素が交叉。時折変拍子も含む楽曲は、キャッチー過ぎないメロディアスさがいい塩梅で、涼やかな女性スキャット・ボーカルのハマりも悪くなく、エスニックなグルーヴをさりげなく取り入れたリズムも心地好い。派手ではないが安定して流暢な演奏はカッコよく、全体が淡い郷愁感に収束する好盤と思う。このアンバーな情感は、ともかくも流していて心地好い。
輸入盤
(Progressive/Psyche,Ethnic,Symphonic / Digi-Sleeve CD(2021) / Tonzonen Records/German)
Alexander Kuzovlev(g,saz,mdln)
Alexey Klabukov(kbd,syn)
Vitaly Borodin(vln,acdn)
Arkady Fedotov(b,syn,noise,rcdr,vo)
Ivan Fedotov(ds,per)
Alexey Esin(gusli,midi-sax)
Sonya Vlasova(vo)
Produced by Unknown
収録曲目
1.Ne Enlitigu Ce La Maro
2.Lebedivo
3.Le Papillon Ou Moi
4.Cloudarias
5.Sonos No Meu Pelo
6.Myth Of Uqbar
7.Samavaya
8.Song Of Opaque
9.Stymphalian Birds