国内のソニー・ミュージックから、BSCD2(Blu-spec CD2)&3面開きデジパックでのリリース。イギリス農業の父と言われる、手押し耕耘機の発明者の名を冠するジェスロ・タルは、63年にエジンバラ出身のイアン・アンダーソンがロンドンに出て来て、ジョン・エヴァン、ジェフリー・ハモンド、バリモア・バーロウと結成したザ・ブラディスを母体としている。ジョン・エヴァン・スマッシュを経て67年に一旦解散するが、数カ月後にアンダーソンを中心に再編、グループ名をジェスロ・タルとした。本作は、22年にUK/EUのインサイド・アウト/ソニーからリリースされた23枚目のスタジオ・アルバムで、邦題は「ザ・ゼロット・ジーン」、歌詞掲載ブックレット入、ライナーは山田順一、アンダーソンの曲解説含むセルフ・ライナー&歌詞対訳付。メンバーは、アンダーソン、フローリアン・オパーレ、ジョン・オハラ、デイヴィッド・グーディア、スコット・ハモンドの5人編成を基本に、1曲でジョー・パリッシュ・ジェームズがゲスト参加。03年「クリスマス・アルバム」から18年振りのスタジオ作品だが、オハラとグーディアはその頃からのメンバーで、オパーレも04年以降ライヴでマーティン・バレの代役をしばしば務めていたりと、20年近い馴染みのメンバー達による熟れたサウンドを堪能出来る。ポピュリズム、人権、差別、気候変動、コロナなどの現在の社会問題に、聖書の一節を絡めて警鐘を鳴らす歌詞と、結果としてらしさ満点の演奏のバランスもいい塩梅で、ブルース、トラッドの要素が交叉するアンサンブルは相変わらず真っ当。タル調健在の好盤と思う。
国内盤
(Progressive/Blues,Psyche,Folk / Digi-Pack BSCD2(2022) / Sony Music/Japan)
Ian Anderson(vo,fl,ac-g,mdln,wsle,hmca,per)
Florian Opahle(el-g)
John O'Hara(org,p,acdn,kbd)
David Goodier(b)
Scott Hammond(ds)
Joe Parrish-James(el-g)
Produced by Ian Anderson
収録曲目
01.Mrs Tibbets/ティベッツ夫人
02.Jacob's Tales/ヤコブの物語
03.Mine Is The Mountain/山は私のもの
04.The Zealot Gene/狂信者の遺伝子
05.Shoshana Sleeping/ショシャナの眠り
06.Sad City Sisters/悲しい街の姉妹たち
07.Barren Beth, Wild Desert John/不妊のエリザベト、荒涼たる砂漠のヨハネ
08.The Betrayal Of Joshua Kynde/ジョシュア・カインドの裏切り
09.Where Did Saturday Go?/土曜日はどこに消えた
10.Three Loves, Three/三つの愛、三つ
11.In Brief Visitation/束の間の訪問
12.The Fisherman Of Ephesus/エフェソスの漁師