USAのスリル・ジョッキーから、ペーパースリーヴでのリリース。紙ジャケ仕様。サリー・アン・モーガンはノース・カロライナ州西部のアッシュビル出身のトラディシャンで、12年にブラック・ツイグ・ピッカーズに加入、17年にサラ・ルイーズとハウス・アンド・ランドを結成、20年にソロ・ファースト「スレッド」をリリースした。アパラチア山脈地方のトラッド&フォーク・ソングを基調として、即興やミニマル・ミュージック、ドローン等の要素を織り交ぜた独特の試みを軸に、前述のバンドやユニットとソロを並行して活動している。本作は、21年にリリースされたソロ名義セカンド・アルバムで、フィドル、アコギ、バンジョー、アパラチアン・ダルシマー、グロッケンシュピール、ベル、各種パーカス等々を、サリー・アンが1人でマルチに操る多重レコーディングでの制作。ドローン調のフィドルやダルシマーのリフ&フレーズと、ミニマル感を内包したアコギやバンジョーのアルペジオをループさせて、ベルや口琴、グロッケンシュピール、各種パーカス等で装飾した空間に、フィドルの即興でテーマやメロディらしきものが漂うスタイルが基本。ある意味、ナチュラリストやスロー・ライフ系のスピリチュアルさ十分だが、その線の信仰に近い胡散臭さや押しつけがましさは皆無で、演奏に真摯に埋没せんとする嘘のないサウンドという印象。全体に漂う緊張感と滲み出る淡い情感は美しく、優れて瞑想的で流していて非常に心地好い。「ホーム・スープ」辺りを始めとして、ともかくもドローン感が絶品で、涼やかな空気感が何か有機的な感覚に収束する、正しくサイケな好盤と思う。余談だが、サリー・アンはラットビー(プレス&デザイン)の名で、グリーティング・カードやロゴ制作などの版画&ドローイング・アーティストとしても活動していて、素朴だが洗練されたセンスのよい画風は、本作にも通じる印象。素晴らしい!。
輸入盤
(Acid Folk/Psyche,Appalachian Trad,Drone / Paper-Sleeve CD(2021) / Thrill Jockey/USA)
Sally Anne Morgan(aka.Ratbee)(fdl,g,banjo,dlmr,glocken,bells,per,etc)
Produced by Unknown
収録曲目
01.Night Window
02.Prune
03.Hori Hori
04.Pythagoras
05.Sandbox
06.Through The Threshold
07.Home Soup
08.Angeline
09.In Come A Bee
10.Word For World