UKのハドソン・レコードから、3面開きデジスリーヴでのリリース。カリーネ・ポルワートはスコットランドのバンクノック出身の女性シンガー・ソング・ライター(SSW)で、スティーヴ・バーン、マーク・ダンロップ等とともに98年にマリンキーを結成、2枚のアルバムをリリース後脱退、03年にソロ活動に転じた。本作は、17年にリリースされたセクス・アルバムで、16年にエジンバラ国際フェスで、ロイヤル・ライシアム・シアター劇団の演劇を交えて披露された、「ウインド・レジスタンス」を元にしたアルバム。同じくスコットランド出身の、女性コンポーザー兼サウンド・デザイナーのピパ・マーフィーとの共作で、メンバーは、共同プロデュース兼任のカリーネとピパを核に、コリーナ・ヘワット、サンドラ・マッケイ、ケヴィン・マクガイア、カルム・マッキンタイア、ケイト・ヤング等が曲によって適時参加。毎年秋になると、アイスランドやグリーンランドから南スコットランドのファラ・フロー・ロック湖に渡ってくる雁の群への想いを軸に、エコロジーや連帯といったテーマを、語りを交えた淡々と美しいフォーク・サウンドで綴った、優れて瞑想的なサウンドアート的作品。アコースティック・ギター、インディアン・ハーモニウム、サンスーラ、ハープ、グロッケンシュピール、ピアノ等によるアンサンブルは、音響的サウンドスケープも含め非常に静謐な佇まいで、抑えたトーンのボーカルやエレガントでしつこくない語りが見事なくぐもり感を放つ。時折聴こえる成鳥や雛の雁の囀りの挿入も自然で、全体として前に出ない感じがあって、ともかくも流していて非常に心地好い大好盤と思う。トラッド的メロディやコードを基調とした楽曲の郷愁感も申し分なく、本当に素晴らしい。
輸入盤
(Folk&Folk Rock/SSW,Acid Folk/ Digi-Sleeve CD(2017) / Hudson Records/UK)