オーストラリアのサンドストック・ミュージックからのリリース。マーラ!はメルボルン出身のグループで、マーラ&ルー・キエク夫妻が中心となって80年代初頭に結成された。ブルガリアやトルコで現地の民族音楽や唱法を本格的に学んだマーラを核として、オーストラリア出身ながら東欧とアラブの民族音楽色の強いラジカル・トラッド的サウンドを展開する特異なバンド。本作は、90年にリリースされたフォース・アルバムで、メンバーは、マーラ、ルー、ジム・デンリー、サンディ・エヴァンス、スティーヴ・エレフィックの5人編成を基本に、1曲でブルガリアン・ヴォイス・チームのメサナ・サラタのゲスト参加がある。マーラとサンディのペンによる2曲以外は、全てブルガリアやマケドニア、ハンガリー、イタリア、トルコといった東欧中心のトラッド・チューンを取り上げていて、エッセンスはそのままに独自の解釈とアレンジ、上等な演奏で展開。その意味ではハンガリーのコリンダ辺りにも通じるスタンスだが、エレクトロニクス等には手を出さずブズーキ、ギター、タパン、ジル、サックス、フルート、リコーダー、ダルブッカ、ウッド・ベース等の生楽器によるアンサンブルで、ともかくもノリがよくて非常に上手い。東欧ロマ系のクレズマー色とアラビック色をミックスしたアレンジも独特で、タラフ・ド・ハイデュークス辺りのストレートなロマ系より泥臭さがなく、結果としてそれっぽいが国籍不明のサウンドという印象。マーラのボーカルも含め全体にアクが強く、好き嫌いはあるだろうがかなり濃密な好盤と思う。
輸入盤/デッドストック入荷
(Acid Folk/Radical Trad,Klezmer,Alabic / Jewel-case CD(1990) / Sandstock/Australia)