UKのトピックから、ボーナス2曲(66年のウォーターソンズと98年のウォータードーターズの音源)を加えてのリシュー。ラル&ノーマ・ウォーターソンは、イースト・ヨークシャーのキングストン・アポン・ハル出身の女性トラディシャン&シンガー・ソング・ライター(SSW)の姉妹で、何よりノーマ、ラル、弟のマイク、従兄弟のジョン・ハリソンの4人でスタートしたザ・ウォーターソンズでの活動で知られていると思う。本作は、77年にリリースされたラル&ノーマ名義唯一のアルバムで、メンバーは、ラルとノーマを中心に、ラルの娘マリー(マリア)が5曲で参加している他、曲によってジム・エルドンのフルート&ホイッスル、ペタ・ウェッブのフィドル、ロッド・ストラッドリングのメロディオン、トニー・エングルのコンサーティナが入る。プロデュースはトニー・エングル。ラルとノーマに曲によってマリーも加わった、2声または3声のハーモニー・コーラスを核に、適時前述の楽器群が絡むシンプルなトラッドを展開していて、全体にオーセンティックな雰囲気と空気感が漂う。フォーク・ダンスの原型のようなわりと明るめの曲調の中に、ラル(4曲目)とノーマ(12曲目)の無伴奏シンギング・チューンや、2,5曲目辺りの引き締まった哀愁がいい塩梅で配置されていて、淡々とトラッド然とした進行が心地好い。派手なチューンはないが、中世から現在へと繋がる、貴族ではない搾取される側の民衆的佇まいが滲み出ている印象で、スリーヴのイメージ通りの民衆の生のリアリティが、洗練された旋法(モード)的ハーモニー・コーラスや無伴奏シンギングの中に溶け込んでいる。時間の流れと空気の色が変わる、オーセンティック系トラッドの好盤と思う。
輸入盤/デッドストック入荷
(Folk&Folk Rock/Folk,SSW,Trad / Jewel-case CD(1999) / Topic/UK)