UKのフェルサイド・レコーディングスから、3面開きデジスリーヴでのリリース。キアラン・アルガーはアイルランド出身のトラディシャンで、フィドル&5弦フィドルを中心に、ギター、バンジョー、ブズーキなどの弦楽器をこなすマルチ・プレイヤー。11年にグレッグ・ラッセルとのデュオを結成して、BBCのヤング・フォーク・アワードを受賞した他、ケンブリッジ・フォーク・フェスやフェアポート・コンヴェンションのクロプレディ・コンサートで絶賛を受けた、トラッド・シーンのニュー・カマー。本作は、16年にリリースされたソロ名義ファースト・アルバムで、メンバーは、アルガー、サム・ケリー、トビー・シャー、ジャイルズ・ディーコン、エデン・ロングソンの5人編成を基本に、曲によってキティ・マクファーレン、ジェイミー・フランシス等が適時ゲスト参加。ジグ&リールを基調としたトラッドを軸に、メロディアスで木漏れ日感もあるフォーク調のオリジナルを織り込んだ構成で、『曲が主役』的なオーセンティック感と上等な演奏が、全体にいい塩梅のマッチングを見せる。ジグ&リール・チューンでのアルガーの軽快な高速フィドルは素直にカッコよく、トラッドに対する敬意やブズーキの使い方なども含め、当世風プランクシティといったニュアンスも感じられる印象。アルガーのフィドルのみならず、ケリーの雰囲気のよいボーカルや、的を射たアレンジと弦楽&鍵盤アンサンブルも見事で、ともかくも引き締まっていて非常に心地好い。4曲目を始めとして、オリジナル・チューンにも佳曲が多く、この線としては文句なしの好盤と思う。
輸入盤
(Trad&Folk/Irish&British Trad,Folk / Digi-Sleeve CD(2016) / Fellside/UK)