国内の琉球ヴァイオリン(大城敦博本人のレーベル)から、ボーナス1曲を加えてのリリース。大城敦博は沖縄県那覇市出身のヴァイオリン/ヴァイパー(エレクトリック6弦ヴァイオリン的楽器)奏者で、93年に沖縄のトラッド曲「てぃんさぐぬ花」の伴奏を、ヴァイオリンのピチカード奏法で行って以降、アイリッシュ・トラッドのフィドル奏法などにもヒントを得て、ヴァイオリン&ヴァイパーで沖縄音楽を表現する試みを続けている。みゅーず、ホット・ロッド・チョコレート、ボトムズ・アップ、シセアン(シテアン)・ムゥ・バロック等々、ケルティックやブルーグラス、カントリー、クラシック系のユニットやグループでの活動も経て、現在は京都府南丹市を拠点に、ソロの他ヴィオラ・デ・ガンバ奏者中野潔子とのデュオでも並行活動中。本作は、13年に自主制作盤としてリリースされたファースト・アルバムで、全編沖縄各地のトラッド曲を取り上げ、大城がヴァイオリン1本で展開している。前述のピチカード音や指笛模倣音などなど、曲によっては音を重ねていたりもするが、基本的に一発録りに近いシンプルで淡々とした佇まいのサウンドで、どこか懐かしさが内包された優しいメロディが、素朴なヴァイオリンの音色とよいマッチングを見せる。素朴とはいっても、大城のヴァイオリンはちゃんとボディが鳴ってる上等な音色で、フィドル的なリズム感とクラシック的な美しい和音が担保された、流していて心地好いサウンドスケープ。涼やかな静謐さの中に、少なくとも20年に渡って試行錯誤を続けた積み重ねが滲み出ている印象で、ボーナスのヴァイパー・ヴァージョンも含め、ボーナス沖縄民謡の1つのあり方として面白い好盤と思う。
琉球ヴァイオリン盤
(Trad&Folk/Ryukish Trad,Progressive / Jewel-case CD(2013) / Ryukish Violin/Japan)