UKのルード・コード・レコードからのリリース。M・オパスはダブリン出身のグループというかユニットで、アーチ・スタントンの名前でデヴィッド・クロス・バンドに参加していたジョナサン・ケイシーが、旧友のコリン・サリヴァンと共に14年に結成した。2人の70年代懐古趣味を反映するためのユニットらしく、15年ファースト「1975 トリプティク」は75年、19年セカンド「オリジンズ」は78年に制作されたという架空の設定でリリースされている。本作は、23年にリリースされたサード・アルバムで、メンバーは、前作からのケイシー、コリン・サリヴァン、マーク・グリストの3人に、新たにPJ・オコンネルを加えた4人編成、プロデュースはケイシー。今回は72年の制作という設定らしいが、「マナナンの慈悲」というアルバム・タイトル通り、ケルト神話に登場する伝説上の人物、マナナンをモチーフとしたコンセプト・アルバムの様相も呈していて、70年代シンフォニック・プログレ調ど真ん中的なサウンドを展開。ムーディ・ブルース的メロディアスさ、イエス的ソリッドさの演奏とアレンジ、後期ジェネシス&U.K.的洗練感とポップネスなどが、わりといい塩梅のバランスでミックスされている印象で、ありていに纏めると『ムーディーズ的楽曲をイエス的アンサンブルでやっているような』感じ。近年のメタル系デフォルト感の強い、ほとんどチョーキングを使わないハイフレットでの高速スケール練習調ギター・ソロが出てくる辺りで、既に70年代設定は無理々々な感じだが、それでも全体を覆うプログレ然とした情感と音色は十分に70年代調で、演奏のカッコよさや時折聴こえるロバート・フリップ的ギターも含め、プログレ系愛好家はけっこう楽しめると思う。
輸入盤
(Progressive/Symphonic,Pops,Hard / Jewel-case CD(2023) / Rude Chord Records/UK)