UKのヴォイスプリントからのリシュー。97年イタリアのソニック・ブック盤「ネクロマンサーズ・オブ・ザ・ドリフティング・ウエスト(本+CD)」のCD、01年UKムーンクレスト盤「アベラール&エロイーズ」と同内容だが、15年のUKゴンゾ盤「ネクロマンサーズ・オブ~」は全く内容が異なるので留意されたい。本作は、70年7月にミュンヘン・テレビのアニメーション映画「アベラール&エロイーズ」のサウンドトラックとして制作された音源で、メンバーはセカンド「天地火水」と同じ、グレン・スウィニー、ポール・ミンス、リチャード・コフ、アーシュラ・スミスの4人編成。「アベラール&エロイーズ」は、11~12世紀のフランス人スコラ哲学者・神学者だったピエール・アベラールと、アベラールが家庭教師をした美しい尼僧エロイーズ・フーベルトとの、悲劇的な恋の物語で、エロイーズの父親は2人を引き裂こうとするが、2人は最後までお互いに想い続けようとするというようなストーリーだったと思う。キリスト教の浸透によって『個人』が成立し、女性が未婚の母となっても自分の意思を貫こうとするなど、それまでにはなかった対等な男女人格間での恋愛が描かれているとされる画期的な物語。ストリングスが不協和音のドローンを多用し、リズムがあまり目立たないパートが多く、「パート1」後半部や「パート4」のような動きのあるパートには古楽的なトラッドの香りが、「パート1」前半部や「パート6」などのドローン・パートには古楽的な現代音楽の香りが漂う。その意味では古楽然とした呪術的雰囲気が強く、中世的な暗さと無気味さの中にほんのりと感じられる格調の高さが、古楽とも現代音楽ともつかない微妙で繊細な印象を醸し出している。セカンド程聴きやすくはないかも知れないが、雰囲気十分で非常に演奏性も高い好盤と思う。TESオビ・解説/人脈図付
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輸入盤
(Psyche/Experimental,Drone,Progressive /Jewel-case CD(2014) / Voiceprint/UK)