フランスのムゼア・プロダクションから、70年のアルバム未収シングル両面2曲をボーナスで加えての、23年新規リマスター&見開きデジスリーヴでリシュー。フレミング・ユースは、ウォーカー・ブラザーズのジョン・ウォーカーの69年UKツアーのバック・バンドを母体とするグループで、ツアー終了後にフィル・コリンズ、ブライアン・チャットン、ゴードン・スミス、ロニー・キャリルの4人がヒッコリーを結成、シングルを1枚リリース後フレミング・ユースに改名した。プログレ系リスナーには、何よりこの後ジェネシスのコリンズ、この後ジャクソン・ハイツのチャットンが在籍していたことで知られいるかも知れない。本作は、69年にUKフォンタナからリリースされた唯一のアルバムで、メンバーは、前述のコリンズ、チャットン、スミス、キャリルの4人編成。概ね、『サージェント・ペパーズ・シンドローム』を引き摺ったアート・ロック方面のサウンドを展開していて、ソフト・サイケ調のポップネスとプログレ調のアレンジ、クラシック基調の要素などがわりといい塩梅のバランスで交叉。勿論ジェネシスやジャクソン・ハイツ方面を期待するとスカされるが、ホルストの「惑星」モチーフの4曲目を始めとして、オルガンを軸とする緩急の効いたアンサンブルはそれなりにプログレ色も十分で、適時入るオーケストラのハマりも悪くない。コリンズはそれ程目立ってはいないが、あの独特のタイム感はすでに顕れていて、この線としては安定して楽しめる。オリジナルLPのプレミアム云々を抜きにしても、楽曲の嫌味のないキャッチーさも含め、いかにも当時の空気を反映した好盤と思う。余談だが、バンド解散後、コリンズとキャリルは揃ってジェネシスのオーディションを受け、コリンズだけ受かったということらしい。
輸入盤
(Psyche/Art Rock,Progressive,Pops / Digi-Sleeve CD(2023 Re-master) / Muses Production/France)