UKのスプーン・レコードから、12年新規リマスターでのリシュー。カンは、ミュージック・アカデミアの教師だったホルガー・シューカイとイルミン・シュミット、フリー・ジャズ畑のドラマーだったヤキ・リーヴェツァイトが、映画のサントラ制作の為に68年にケルンで結成したインナー・スペースを母体とするグループで、アカデミアでシューカイの生徒だったミヒャエル・カローリ加入後にカンに改名した(異説あり)。唯一無比の個性と先鋭的な音楽性を放ち、その後のプログレ、パンク、ニュー・ウェイヴ、テクノ等々、数多のミュージシャン達に影響を与えたジャーマン・サイケを代表するバンドの1つ。本作は、71年にドイツUAからリリースされたサード・アルバムで、オリジナルLPは2枚組だったので2in1CDとなる。メンバーは、上記のシューカイ、シュミット、リーヴェツァイト、カローリの4人に、必殺の放浪者ダモ鈴木を加えた5人編成で、知性的なサウンド構築の中にヴァイオレントな混沌が蠢く、非常に正しくサイケな仕上り。ファーストから一貫した、一発録りのインプロ・マテリアルが主体となっていて、日本語訛りの英語もしくは英語訛りの日本語を駆使?するダモのボーカルも絶好調で、サイケ・ガレージの暴力性とアシッドの猥雑感に、マジカルな呪術的ボーカルやシューカイの操る抽象的なエフェクト効果が奇妙なマッチングを見せる。ファーストからは少しづつソフィスティケイトされつつも、変態感が担保された雑多な状態のパワーが、圧倒的なバンド感とともに解放されている印象。この線としてはおよそ文句なしの好盤と思う。EUプレス盤
輸入盤
(Psyche/Progressive,Experimental / Jewel-case CD(2012 Re-master) / Spoon Records/UK,EU)