UKのリアクティヴ/エソテリックから、10年新規リマスターでのリシュー。新規リマスターにより、クリアで迫力もあって音質がよくなっている。ブレインチケットは、ベルギー人キーボーティストのヨエル・ヴァンドルーゲンブロイクが中心となって、68年にドイツで結成されたグループで、エレクトロニクス&音響系、サイケ、プログレ、エスニックの要素をミックスさせた、わりと独特のサウンドを展開する希有なバンド。本作は、「天空の海」と題されたサード・アルバムで、73年にイタリアRCAからリリースされた。同年にドイツRCAからもスリーヴ違いでリリースされており、本作はイタリア盤スリーヴ。メンバーは、セカンドからのヨエル・ヴァンドルーゲンブロイク、バーニー・パーム、キャロル・ムリエルのトリオ編成となっていて、『古代エジプトの死者の書にインスパイアされた』というクレジットの通り、エジプト死者の書をモチーフにしたトータル・コンセプト・アルバム。絶妙の音色を奏でるハモンド・オルガン、くぐもったフルート、スペイシーなノイズ・フラグメントと各種パーカス、シタールも含めた民族楽器、ダイアログ的なキャロルのウィスパー・ヴォイスを上手く絡めた音響空間は、時折顔を出すヒップなバンド演奏を区切りのように使って、確かにある種のストーリーとダイナミズムが感じられる。ほとんどエクスペリメンタルなドローン音響エレクトロニクス作品とも云えるが、小難しさは皆無で聴きやすく、質も高くてかなり面白い。少なくともファーストから本作までの3枚は、サイケ愛好家なら問題なく楽しめること請け合いで、スリーヴも含め正しくサイケで要チェックの好盤と思う。
輸入盤
(Psyche/Progressive,Drone / Jewel-case CD(2010 Re-master) / Reactive,Esoteric/UK)