UKのReRから、03年新規リマスターでのリシュー。アート・ベアーズは、元ヘンリー・カウのフレッド・フリス、クリス・カトラー、ダグマー・クラウゼ(ex,スラップ・ハッピー)の3人が新たに結成したグループで、本作は79年にReR/レコメンデッド・レコードからリリースされたセカンド・アルバム。メンバーは、ギター、ヴァイオリン、キーボード、シロフォンのフリス、ドラム&パーカスのカトラー、ボーカルのクラウゼのトリオ編成。このトリオ編成による最初のレコーディング作品で、即興メインの多重レコーディングなのだが、ともかくも張りつめているというか、中世的教会音楽とパンクが合体したかのようなちょっと独特の緊張感がある。呪術的で難解だが原初的かつシンプルで、非常に独特な無視出来ない引っかかり感があって、最早ヘンリー・カウ的アンサンブルの再生産ではない、何というかもっと違うステージに入ったという印象。この中世暗黒感と呪術感は、この後アール・ゾイやユニヴェル・ゼロによって引き継がれていくという意味では、80年代以降のチェンバー・ロックの原点ともいえるかも知れず、ヘンリー・カウとその次世代の同系統のシーンを繋ぐ存在ともいえる。アンチだが肯定的スタンスという、ある意味とても微妙で恐い音楽という感じだが、この満点のアングラ感は非常にインパクトが強く、3作品中最もわかりやすいかも知れない。ともかくも浮世離れした濃密な悲しみと暗黒感を放つ、チェンバー・ロック系文句なしの好盤と思う。
輸入盤/デッドストック入荷
(Psyche/Chamber,Experimental,Progressive / Jewel-case CD(2003 Re-master) / ReR/UK)