スウェーデンのトンバード・グラモフォンから、300枚限定のデジパックでのリリース。ニクラス・バーリ(バルケル)は、アネクドテン、モルト・マカブレ、マイ・ブラザー・ザ・ウインド等々での活動で知られるギタリストで、本作は22年にリリースされたソロ名義セカンド・アルバム。2台のメロトロンとアープ・オデッセイ、パーカスを駆使した、バーリ1人による多重レコーディングで、コスモゴン(ソフィー・リンデルとのデュオ・ユニット)の21年作品「マッサン」の延長線上にある、70年代ジャーマン・サイケへのオマージュ的エレクトロニクス方面。というのも、アープ・オデッセイの低音ドローンと、ストリングス&フルート音を軸としたメロトロンのドローン・メロディが、ゆったりとしたうねりで漂うサウンドスケープは、端的にタンジェリン・ドリームの「フェードラ」、「ルビコン」、「リコシェ」、ポポル・ヴーの「ファラオの庭にて」辺りに近似する印象。エコー&リヴァーブの使い方が上手く、適時パーカスを絡めたミニマリスティックな要素もハマっていて、ダーク・アンビエント調だが暗黒過ぎず、ある種の幽玄なスピリチュアル感の構築に成功している感じ。この、全体に滲み出る淡い郷愁感が担保された内省的な瞑想感は、2週間山籠りしてレコーディングした結果ということ以外に、アネクドテン時代から一貫してメロトロンに執着してきたバーリの、メロトロン好きとしての1つの到達点なのかも知れない。内包されたスペイシー感も含め、存外に埋没感があって流していて心地好く、正しくサイケで優れて瞑想的なダーク&ドローン系トリップ・ミュージックの好盤と思う。
輸入盤/限定300枚プレス
(Psyche/Drone,Elecronics,Progressive / Digi-Pack CD(2022) / Tonbad Grammofon/Sweden)