ドイツのMIG/メイド・イン・ジャーマニーから、本作レコーディング時の未発表アウトテイク1曲をボーナスで加えての、デジパックでのリシュー。07年のドイツSPV/リヴィジテッド盤と同じリマスター音源で、ボーナスも同じ。クラウス・シュルツェはベルリン出身のエレクトロニクス奏者&ドラマーで、タンジェリン・ドリームとアシュ・ラ・テンペルを経て、現在もソロ活動を続けるジャーマン・エレクトロニクス界のビッグ・ネーム。本作は、76年にドイツのブレインからリリースされたセクス・アルバムで、メンバーは、エレクトロニクス、シンセ、オルガン等のシュルツェと、ドラムのハーラルト・グロスコフのデュオ編成。スリーヴに記載された、『このレコーディングは、今まで私が追求してきたものとは違うロック・ミュージックへの扉を開けるものであり、私はこの新たな扉を開け、そして進む』というシュルツ本人のコメント通り、ドラムのロック・ビートを取り入れた本作のサウンドは、吹きすさぶシンセの風が中心だった前作までとは確かに趣を異にする。同時期のタンジェリン・ドリームにも近似する、スペイシーなシーケンサーの使い方も、本作からの新たな試みといえるが、従来の透徹した冷たさや寒い空気感はそのまま担保されていて、結局シュルツェ流の中世的暗黒感に収束していく印象。この人の内省的トリップ感は決して優しくはないが、空間の骨組を作るシーケンサー、哀しいストリングス系のテーマ、飛び交うホワイトノイズ、躍動するドラムのバランスがよく、ともかくも演奏が素直にカッコいい好盤と思う。トリップ・ミュージックとしても十分成立している。ボーナスは1曲目の別テイクか?。
輸入盤
(Psyche/Electronics,Medidtation,Progressive / Digi-Pack CD(2016 '07Re-master) / MIG-Music/German)