フランスのシェルター・プレスから、ペーパースリーヴでのリリース。300枚限定プレス。クレア・ラウジーはテキサス州サン・アントニオを拠点とする実験音楽家兼パフォーマーで、19年頃からカセット・テープやLP、配信で数多のソロ作品の他、モア・イーズ、キャロル・ジェネッティ、アレックス・カニンガム、ジェイコブ・ウィック、ダニ・トーラル等々との共演作品もリリースしている。本作は、22年にリリースされたアルバムで、メンバーは、クレアを核に、カニンガム、マリ・モーリス、マリルー・ドノヴァン、セオドア・ケール・シェーファーがほぼ全編で参加。おそらくリヴィングやキッチンでの会話や作業音などのマテリアルを、ミュージック・コンクレート手法で再構築したノイズ・フラグメントと、ヴァイオリン、ハープ、ピアノのアコースティック楽器の爪弾き的フラグメントをコラージュした、かなり映像的な情景アンビエント調サウンドを展開。時間の流れが遅くなるヴァイオリンやエレクトロニクスのドローン感は、例えば去りにし日々を慈しむかのような甘美な郷愁感で、何の音なのか判然としない環境音フラグメントのストーリー性豊なコラージュや、ハープ、ピアノの爪弾きメロディ＆コードのタイミングも上手い。全体が文学的な淡い情感に収束しつつも、ニューエイジ系のライト感とは明らかに一線を画す内省的埋没感十分のサウンドスケープで、非常に正しくサイケな好盤と思う。この人は、概ねミュージック・コンクレート方面に軸足を置いているのかも知れないが、ドローン＆アンビエント方面の情感センスは侮れない。心地好し！。
輸入盤／限定300枚プレス
(Psyche/Electronics,Musique Concrete,Drone,Ambient / Paper-Sleeve CD(2022) / Shelter Press/France)
