スイス/EUのWRWTFWW(ウィー・リリース・ホワットエヴァー・ザ・ファック・ウィー・ウオント)レコードから、3面開きデジパック&2枚組でのリシュー。ユタカ・ヒロセ(広瀬豊)は山梨県甲府市出身のキーボーティスト兼サウンド・デザイナーで、芦川聡や吉村弘が所属していたサウンド・プロセス・デザイン・オフィス関連の、ミサワホーム企画「サウンドスケープ」シリーズの1枚として、唯一のアルバムとなる「Nova」を86年にリリースした。本作は、サブタイトル通り86~89年におけるサウンド・プロセス・デザインでのセッション音源をコンパイルした初出未発表音源集で、広瀬本人によるライナー・ノーツ付。全て広瀬1人による制作で、「Nova」とも22年にリリースされた未発表集「ノスタルジア」とも音源は重複していない。自然音や会話などのフィールド・レコーディング・マテリアルのサンプリング&プログラミングと、プロフェット5やミニ・ムーグ、その他アコースティック楽器を再構成&エディットした、ミュージック・コンクレート手法内包のアンビエント・サウンドを展開。自然音&擬似自然音を軸とした透明感十分の静謐な曲から、会話や人声を軸としたピエール・アンリ的でアブストラクトなノイズ調まで、『音で時間を彫刻する』というコンセプトの元、『茶道の精神を意識した五感と第六感へのアプローチ』へと収束。全体に「Nova」の俳句的モノクロ感が担保されていて、涼やかな環境音楽的サウンドスケープとクラシカルな電子音楽調ダークネスが交叉する、ドローン・アンビエント系の好盤と思う。ともかくも、この人の音が拡がって響き渡る感覚は存外に心地好い。
輸入盤
(Psyche/Ambient,Drone,Musique Concrete / Digi-Pack 2CD(2022) / We Release Whatever The Fuck We Want Records/Switz,EU)