スイスのWRWTFWW(ウィー・リリース・ホワットエヴァー・ザ・ファック・ウィー・ウオント)レコードから、デジパックでのリシュー。小久保隆はキーボーティスト兼サウンド・デザイナー兼環境音楽家で、70年代のリング、80年代の平沢進(ex.P・モデル,etc)とのE・プロジェクト、自身のユニットのエレクトリック・ファンタジー、00年代の津田治彦と復刻したハル&リング等を経て、現在は緊急地震速報のアラーム音や電子マネー「iD」の決済音などの制作の他、環境音楽のYouTubeチャンネルでも活動している。アンドレア・エスペルティはトロンボーンを主軸とするイタリア系スイス人管楽器奏者で、ヨー・ヨー、プロジェクト・デロス等を経て、現在はエスペルティ・プロジェクトを率いて東京を拠点に活動しているらしい。本作は、23年にリリースされたデュオ名義アルバムで、メンバーは小久保、エスペルティの2人を核に、曲によってマリカ・アラウィー、ミネハハ(aka.松木美音)が適時ゲスト参加。概ね、シンセとフィールド・レコーディング・マテリアルを軸としたアンビエント空間に、トロンボーンやピアノ、女性スキャット・ボイス等々が緩やかに浮遊するサウンドで、全体が滲んでいくようなドローン感に収束。虫や鳥、カエルの鳴き声、風や木の揺れる音、篳篥や笙っぽい音、何かしらが擦れたり蠢くような音などなど、おそらくフィールド・レコーディングやホワイトノイズを軸としたノイズ・フラグメント群がともかくも上等で、わりと抜群の耳触りのよさとまどろみ感を堪能出来る。コロナ・パンデミック中の21年の制作ということで、鬱屈とした閉塞感が淡い情感の中で解放されていくような、ともかくも静謐で洗練されたセンスの大好盤と思う。素晴らしい!。
輸入盤
(Psyche/Drone,Ambient / Digi-Pack CD(2023) / We Release Whatever The Fuck We Want Records/Switz)