UKのエソテリック・アンテナからのリリース。ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーター(VDGG:高電圧静電発電機)は、ピーター・ハミルとクリス・ジャッジ・スミスのデュオ・ユニットとして67年にマンチェスターで結成されたグループで、数度の解散と休止期間を経て、現在も独自の存在感を維持しながら活動を続ける孤高のビッグ・ネーム。本作は、16年にリリースされたニュー・アルバムで、14年のライヴ「マーリン・アトモス」に続く再編第7弾、スタジオ盤としては12年の「ALT」に続く再編フィフス、20年再プレス盤。メンバーは、前作と同じハミル、ヒュー・バントン、ガイ・エヴァンスのトリオ編成。概ね、結果としていつもの濃密で重厚なVDGG的様相に大きい変化はなく、その意味では安定して金太郎飴的で、例えば「トライセクター」のような派手でわかりやすいインパクトの強さではない。ところがしかし、ギター、ピアノ、オルガンを核としたリフとフレーズを細かく組み合わせた、場面転換の多い畳み掛ける展開は見事で、殊の外凝ったアレンジによる優れて映像的なサウンド。従来は、基本的にライヴで再現可能な範囲のシンプルさを保ったアレンジ・演奏が多かったが、本作ではそれを逸脱した複雑さに踏み込んでいて、聴き込むにつれ音色の多さや彩に味わいが増していく印象。内省的な透徹感やB級ロック調のカッコよさ、引き締まった情感、ダンディなダークネスも十分担保されていて、少し分裂症気味の目眩く詰め込み型のアンサンブルが、上等なコラージュのように滑らかに流れるスルメ的味わいの好盤と思う。それにしても、このバンドには駄作がない。カッコよし!。
輸入盤
(Progressive/Psyche,Heavy Symphonic / Digi-Pack CD(2016) / Esoteric Antenna/UK)