イタリアのユニバーサルから、3面開きデジパックでのリリース。クリアー・スリップ・ケース入。フランコ・バッティアートはシチリア島カターニャ出身のアーティストで、作詞、作曲、ボーカル、各種楽器、プロデュース等の音楽畑の他にも、画家やデザイナーとしても知られ、現在も活動を続けているイタリアのビッグ・ネームの1人。60年代中期にミラノでシンガーとしての活動を開始して68年にデビュー、72年からのブラ・ブラ・レーベル時代はアート・ロック、エレクトロニクス、ミニマル、実験音楽などのサイケ&プログレ系の作品群を制作。79年以降は再びポップス・シンガーとなって、ジュスト・ピオが本格的に絡むようになった80年代末以降は、クラシックの要素も取り入れた独特のサウンドを展開。本作は、12年にリリースされたアルバムで、メンバーは、バッティアート、サイモン・トン、カルロ・ジュアイトーリ、カルロ・ボッカドロ、ファソ、ゲヴィン・ハリソン(ex.キング・クリムゾン,etc)、ピーノ・ピシェトーラの7人を軸に、曲によってストリングス・クァルテットやパーカス等が適時ゲスト参加。基本的には、80年代以降のエレクトリック・ポップス色に90年代以降のクラシカルな要素を絡めた、近年のバッティアート的サウンドと呼べるエレガントなエレポップ路線だが、70年代に展開していたミニマル的要素が隠し味的に入っていて、楽曲には独特の郷愁感が復活している印象。特に、1,4,9曲目辺りの哀愁は抜群で、フワ~っとした浮遊感満点なのに説得力があって、何とはなしに胸に染み入るバッティアートのボーカルは、相変わらずシンプルで素晴らしい。エレポップながらバンド感のあるバックの演奏にも妙があって、全体に前に出ない淡々とした雰囲気も非常に心地好い。それ程派手さはないが濃密というか、流していて耳触りのよいセンス上等の好盤と思う。ともかくも、この人の声とボーカルにはある種の達観した優しさが感じられる。21年5月に他界してしまった、合掌!。
輸入盤/デッドストック入荷
(Progressive/Pops,Psyche,Minimal / Digi-Pack CD(2012) / Universal/Italy)