クロアチアのスカルドーナからのリシュー。ミロスラブ・タディッチはセルビア出身のギタリスト(ボスニア人説もあり)で、旧ユーゴ崩壊以前の88年頃からソロ活動の他、ラヴィ・シャンカール、デヴィッド・トーン、マーク・ナウシーフ、ヨアヒム・キューン、ジャック・ブルース、マルクス・シュトックハウゼン等々との共演アルバム&ライヴなど、ワールドワイドに幅広く活動する旧ユーゴ圏のビッグ・ネーム。本作は、00年にクロアチアのワン・レコードからリリースされたミロスラブ・タディッチ&サン・オブ・スラブスター名義唯一のアルバムで、おそらく通算15枚目辺りの作品。メンバーは、タディッチ、アナンド・ベネット、コートニー・ビショップ、バイロン・ホルリーの4人編成、マット・コーエンとタディッチの共同プロデュース。アラビック感内包の地中海音楽色と、ロマ/ジプシー方面のクレズマー色が交叉する、いわゆるバルカン半島民族音楽を基調とした、バカテク・ジャズ・ロック系サウンドを展開。アレア辺りでも聴き覚えのある、変拍子混じりのバルカン・エスニック調フレーズ&リフと、かなりアラビックなリフ&フレーズが曲によって独特のバランスで入り乱れていて、全編がアレア的なわけではないが、明らかにプログレの範疇という印象。ギターと6弦ヴァイオリンの弾きまくり感バトルを軸に、的確にそれをフォローしながら緩急をつけて盛り上がるリズム隊のハマりもよく、インプロの爆発感十分のアンサンブルは素直にカッコいい。ヴァイオリンが炸裂するジャズ・ロック系としても申し分なく、東欧プログレ系愛好家のみならず、ジャズ・ロック/クロスオーヴァー系愛好家一般に楽しめる好盤と思う。
輸入盤/デッドストック入荷
(Progressive/Jazz Rock,Balkan Ethnic / Jewel-case CD(2005) / Scardona/Croatia)