国内のオールディーズ・レコードから、68年のアルバム未収シングル4曲をボーナスで加えての、限定ペーパースリーヴでのリシュー。イギリス農業の父と言われる、手押し耕耘機の発明者の名を冠するジェスロ・タルは、63年にエジンバラ出身のイアン・アンダーソンがロンドンに出て来て、ジョン・エヴァン、ジェフリー・ハモンド、バリモア・バーロウと結成した、ザ・ブラディスを母体としている。ジョン・エヴァン・スマッシュを経て67年に一旦解散するが、数カ月後にアンダーソンを中心に再編し、グループ名をジェスロ・タルとする。再編当時にはトニー・アイオミ(ex.ブラック・サバス)が在籍していた。本作は、68年にUKアイランドからリリースされたファースト・アルバムで、紙ジャケ仕様、ライナーは八亀弘和、邦題は「ディス・ワズ」。メンバーはアンダーソン、ミック・アブラハムス(ex.ブロードウィン・ピッグ,etc)、グレン・コーニック(ex.ワイルド・ターキー,パリス,カルタゴ,etc)、クライヴ・バンカー(ex.スティーヴ・ヒレッジ・バンド,ソルスティス,etc)の4人編成、アンダーソンとテリー・エリスの共同プロデュース。オールド・ロック系リスナーにとっては今更解説不要の著名盤と思うが、ブルース、ジャズ、トラッドが独特のバランスで同居する、わりとブリティッシュならではのゴッタ煮サイケ・プログレ・サウンドを展開。この、猥雑さが担保されたミックス具合は、ドラッグ方面のアンダーグラウンドな空気感を担保しつつも、決して垂れ流し的なドロドロにならず、どこかメインストリーム系のカッチリした洗練感に収束していて、その辺りがアメリカン・ルーツ・ミュージック系愛好家にもウケのよい理由なのかも知れない。芸達者なアンダーソンやクリア・トーンを上手に操るアブラハムスを始めとして、全員演奏は非常に達者かつ濃密で、素直にカッコいい好盤と思う。
輸入盤
(Progressive/Blues,Psyche,Jazz Rock / Paper-Sleeve CD(2024) / Oldies Records/Japan)