USAのスーペリア・ヴァイアダクトから、限定アナログLPでのリシュー。フランチェスコ・メッシーナはシチリア生まれミラノ育ちのピアニスト兼コンポーザー兼実験音楽家で、写真家やグラフィック・デザイナーとしても活動、フランコ・バッティアートと仲がよかったらしい。本作は、79年の未発表音源集で、ミラノのカルティエール劇場からの依頼でレコーディングされたマテリアル3曲が収録されている。メンバーは、メッシーナ、ファツィア・マッツァのピアノ、ラウル・ロヴィゾーニのフルートの3人で、全て作曲はメッシーナ。概ね、柔らかい透明感のミニマリスティックなピアノを軸に、ゆったりしたドローン調のフルートが絡む、ミニマル・アンビエント・サウンドを展開。丁度、ロヴィゾーニとのデュオ名義アルバム「アナロゴ山を濡らす」と同時期ということもあってか、木漏れ日的情感やアンビエント感のニュアンスが通底していて、全体が淡い郷愁感に収束しつつ雲の上にいるような浮遊感に包まれる感じは、ともかくも非常に絶妙。メッシーナ本人によると、76年にヴェニスで観たシャルルマーニュ・パレスタインのピアノ・ライヴにインスピレーションを得て作曲したそうで、寄せては引く穏やかな反復パターンの美しさや、一定のテンションのパルス的連続が生む麻痺していく感覚など、確かにパレスタインのピアノ・アンビエント作品群の一部にも通じる印象。全体で20分程度と長くはないが、没入感十分の美しい瞑想感はボリュームの少なさを補って有り余る程で、流していて心地好い正しくサイケな好盤と思う。素晴らしい!。
輸入盤/限定プレス
(Psyche/Minimal,Ambient / Vinyl LP(2022) / Superior Viaduct/USA)