USAのキュニフォーム・レコードからのリリース。ミュージシャンは、キース・ティペット、トニー・レヴィン、ポール・ダンモール、ポール・ロジャースの4人が88年に結成した即興ジャズ・クァルテットで、ティペットの地元ブリストルを拠点に、11年にレヴィンが他界するまで22年間同じメンバーで活動した。レヴィンとロジャースは、キング・クリムゾンやフリーの著名人とは同名異人。本作は、10年のレヴィン70歳記念ツアーの合間に、ブリストル大学の音楽スタジオでレコーディングされたセッション音源で、バンドとしてのラスト・レコーディング・マテリアル。メンバーは、前述のティペット、レヴィン、ダンモール、ロジャースの4人編成。30分前後の2曲で、フリー・ジャズのマナーとエクスペリメンタルな即興が交叉する、コール&レスポンスを軸とした先鋭的な演奏を展開。弦も使ったプリペアド的なピアノ、しゃべるサックスとバグパイプ、クールさと饒舌さが同居するドラム、弓弾きも交えた7弦ウッド・ベースが、近づいたり離れたりを繰り返しながらお互い切り込んでは様子を伺い、ちょっとづつ進み場面転換していく様は非常に見事。『このバンドのサウンドは、傑出した数多の音楽の要素をカヴァーしていて、フリー・ジャズに限定されない』とのダンモールの文言通り、どこか魂を削りながら演奏しているような集中力と緊張感を放っていて、スタイリッシュさやエネルギッシュさを身上とする他のフリー・ジャズ方面とは違う味わいという印象。その辺りがカッコよくも心に染みる好盤と思う。ティペットとレヴィンに合掌!。
輸入盤
(Progressive/Free Jazz,Psyche,Experimental / Jewel-case CD(2021) / Cuneiform/USA)