イタリアのBMG/ソニーからのリシュー。特にリマスター表記はないが、音質はクリアで迫力もあってよい。クエラ・ヴェッキア・ロカンダは、71年にローマで結成されたグループで、結成当初は古宿屋跡でよくリハーサルを行っていたことから、『古ぼけた宿屋の人々』というバンド名にしたらしい。本作は、72年にイタリアのヘルプからリリースされたファースト・アルバムで、メンバーは、ジョルジオ・ジョルジ、マッシモ・ロセッリ、ドナルド・ラックス、レイモンド・マリア・コッコ、ロムアルド・コレッタ、パトリック・トライナの6人編成、プロデュースはジャンニ・デル・オルソ。概ね、ヘヴィ・サイケ・プログレと呼べるサウンドを展開していて、初期ジェスロ・タルの強い影響を感じさせるサイケ&ヘヴィなテイストと、クラシカルで抒情的なリフやフレーズが、何ともいい塩梅のマッチングを見せる。タル的なツバ吹き系フルートと1人ハード的ギターに、クラシカルな情感を軸に時折エフェクトもカマせるヴァイオリンやピアノ、モコモコのベースとドカドカのドラムが絡む演奏は、特段に上手いわけではないが勢いがよく、クサすぎない哀愁のメロディと、ハードなリフ&フレーズが相俟ったちょっと独特の味わい。日本のプログレ巷では、シンフォニック路線のセカンド「歓びの瞬間」のほうが人気があるようだが、『クラシカルな要素をラウドな演奏でアバウトに使う』というけっこう面白いことをやっていて、ヘヴィな演奏の炸裂感とサイケなセンスのよさも含め、イタリア臭全開の捨て難いB級のカッコよさを放つ好盤と思う。本作辺りがカッコいいと感じるようになると、イタリアン・ロックのさらに深いところへの扉が開くかも知れない。TESオビ・解説/人脈図付
輸入盤/デッドストック入荷
(Progressive/Psyche,Blues,Classic / Jewel-case CD(2008) / Sony/Italy)