スウェーデン/EUのPIAS/プレイ・イット・アゲイン・サムから、見開きデジスリーヴでのリリース。アリス・ボーマンはスウェーデンのマルメー出身の女性シンガー・ソング・ライター(SSW)で、10年頃からネットで個人的に曲を配信し始め、13年に5曲入EP「スキッサー」でデビューした。本作は、20年にリリースされたファースト・アルバムで、アリスとプロデューサーのパトリック・ベリエル(ex.ビッチ・ホーク,etc)、ファビアン・プライン以外のメンバー・クレジットがなく詳細は判らないが、アリスはボーカルの他にピアノやキーボード、ギターも担当、そしておそらく、ミックス・エンジニア兼任のベリエルとアリスがPCとエレクトロニクスでバック・トラックの多くの部分を制作している可能性もあり。概ね、しっとりと落ち着いた雰囲気の女性ボーカルものというか、ピアノやアコースティック・ギター、ストリングス系シンセやキーボード、ドラム・マシーン、エレクトロニクス等々を適時配置した、ドローン感内包のサウンドを展開。アリスの倍音が多く滲んでいくタイプのくぐもった声と、ウィスパー感内包のシンギングが、淡々と淡い情感が担保されたドローン調の空間に浮遊し続けるサウンドは、フォークともエレクトロ・アコースティックともつかない、わりと独特の『前に出ない感じ』で、ともかくも静謐で流していて非常に心地好い。楽曲はわりとキャッチーで聴きやすく、ローファイ系のアングラ感とメインストリーム・エレポップ系の洗練感が妙なバランスで交叉していて、全体が線の細い儚さのようなものに収束していく印象。アンバーな空気感やサウンドスケープは十分にアンビエント調で、不思議な美しさの好盤と思う。
輸入盤
(Folk&Folk Rock/SSW,Progressive,Electronics/ Digi-Sleeve CD(2020) / PIAS/Play It Again Sam/Sweden,EU)
