フランスの111(ワン・ハンドレッド・イレヴン)・レコードから、未発表曲?2曲をボーナスで加えての、デジパックでのリシュー。マウンテン・アッシュ・バンドはおそらくウエスト・ヨークシャー州出身のグループで、ハダーズフィールドを拠点にしていたと思われる。フォーク系音楽ライター兼コンポーザーとして活動していたコリン・クリップス、当時クリップスの奥さんだったリンダ・ハードキャッスル、すでにトラッド系のソロ・シンガーとして活動していたマーティン・カーター等が中心となって、75年頃に結成されたようだ。本作は、76年にUKウィッチズ・ベインからプライヴェート・プレスの自主制作盤としてリリースされた唯一のアルバムで、500枚程度のプレスといわれるオリジナルLPは、けっこうなプレミアムが付く著名コレクターズ・アイテムとしても知られる。メンバーは、クリップス、リンダ、カーター、ジェフ・ブラウン、アラン・ローズ、グラハム・ジョーンズ、ケヴィン・スリングスビー等々で、多くの曲間にショーン・マンスリーのナレーションが入る。概ね、一部トラッドも交えたクリップスのオリジナル曲と、伝承や寓話を踏まえたレイ・キングの歌詞とナレーション文で、ある種のストーリー仕立てのサウンドを展開していて、70年代中期以降のフェアポート・コンヴェンションやスティーライ・スパン辺りを手本とした、エレクトリック・トラッド方面という印象。随所にトラッド調が鏤められた楽曲と、安定したアコギ、枯れたフィドル、郷愁のリコーダー辺りは普通に心地好く、太くてメロディアスなベースもいい塩梅で、少しディック・ゴーハンっぽいカーターのボーカルも味わい深い。それ程強いインパクトではないが、ほのかに漂うアシッド・フォークロック的B級感も含め、この線としては流していて心地好い好盤と思う。この後リンダとローズは、90年代にスティーヴ・ティルストン&マギー・ボイル夫妻のグレース・ノーツに参加する。
輸入盤/デッドストック入荷
(Trad&Folk/Electric Trad,Folk Rock,Acid Folk / Digi-Pack CD(2015) / 111 Records/France)