フランスのレプリカ/ムゼアから、16年新規リマスター&デジパックでのリシュー。ダシェル・エダヤはフランス南部のトゥーロン出身のシンガー・ソング・ライター(SSW)兼作家兼評論家で、主に音楽家はメルモス、ダシェル・エダヤ、作家はジャック・アラン・レジェ、現代&実験音楽&文芸評論家は本名のダニエル・セロンの名で活動していた。音楽家としては、69年のメルモス名義「La Devanture Des Ivresses」と71年のエダヤ名義の本作を残し、鬱病と生涯戦いながら13年に66歳で他界している。本作は、71年にフランスのシャンダールからリリースされたエダヤ名義唯一のアルバムで、メンバーは、エダヤを中心に、デイヴィッド・アレン、ディディエ・マルエブ、クリスチャン・トリッシュ、ピプ・パイル、ジリ・スマイス等々の、「カマンベール・エレクトリーク」時のゴングが全面参加している他、ビートニクの御大ウィリアム・バロウズもアメた語りを披露。基本的には、同時期のゴングにエダヤが入ってヴォーカル&ギターを担当しているような、アーシーで湿ったサイケ・プログレを展開していて、コラージュ、SEも交えた即興的なセッション感の強いサウンドはかなり初期ゴング的。子供の頃に発症した鬱病を抱えながら、ビートニク文学やカンタベリー・ロック、サイケ、現代音楽に惹かれ、自身が同性愛者であることへの差別の経験などを思うと、4曲目の少しカオティックな分裂症気味の攻撃性や、3曲目のダメダメな哀愁も胸に染み入る。ともかくも、初期ゴング、ソフト・マシーンに近似するサイケ感を放つ好盤と思う。余談だが、9.11以降は、ムスリムとイスラム原理主義を区別すべしと、非常に真っ当な主張を展開した。
輸入盤
(Progressive/Psyche,Canterbury / Digi-Pack CD(2016 Re-master) / Replica/Musea/France)