UKのビリーヴァーズ・ローストから、スキンタッチ紙＆見開きデジスリーヴでのリリース。カヴース・トラビはテヘラン生まれプリマス育ちのイラン系イギリス人マルチ奏者で、モンスーン・バスーン(ファゴット)、カーディアックス、ナイフワールド、ゴング等々での活動で知られていると思う。リチャード・ワイルマンは、おそらくウィルトシャー州スウィンドン出身のマルチ奏者で、ロルナ・カンバーランドとのライヴス・アンド・タイムズやア・ニュー・アイデア・オブ・ヘヴンで90年代初期から活動を開始、現在はカルダ・エストラを主軸にソロ活動も行っている。本作は、23年にリリースされたトラビとワイルマンの連名名義アルバムで、メンバーは、ボーカル、ギター、ベース、キーボード、その他のトラビとワイルマンを核に、カルダ・エストラ出入りのメンバーでもあるエイミー・フライ、キャロン・ハンスフォード、マイク・オズタイムが適時参加。概ね、カンタベリー・ライクなポップ＆サイケ色、プログレ感内包のネオ・クラシカル色、アブストラクト系のストレンジな実験色が交叉する、ドラムレスのちょっと独特なサウンドを展開。近年のカルダ・エストラ的室内楽調プログレ感を基調に、トラビの当世風カンタベリー調サイケ色と、元々ワイルマンも持ち合わせていたであろう80年代ニュー・ウェーヴ以降のポップネスが、浮遊感十分のコードに乗ってエレガントに吹き抜ける感じ。この一捻りある屈折したセンスは、誰もがわかりやすくて聴きやすい方面ではないかもしれないが、どこか涼やかでメインストリーム系のキャッチーさが担保されていて、よく練られたアレンジも非常に面白い。妙な塩梅の妖しい美しさを放つ好盤と思う。
輸入盤
(Progressive/Psyche,Canterbury / Digi-Sleeve CD(2023) / Believers Roast/UK)
