USAのキールド・スケールズから、デジパックでのリリース。モライア・ベイリーは(おそらく)オクラホマ州オクラホマ・シティ出身の女性シンガー・ソング・ライター(SSW)兼ハープ奏者で、15年にサン・リア名義でカセット・テープ作品「ファイアフライ・ナイト・ライト」をリリース後、17年にモライア・ベイリー名義で「シッティング・ウィズ・サウンズ&リスニング・フォー・ゴースツ」をLPと配信でリリースしている。本作は、22年にリリースされたモライア・ベイリー名義セカンド・アルバムで、メンバーは、ハープ弾語りスタイルのモライアを軸に、サラ・リード、リッキー・トゥターン、ライアン・ロビンソン等が曲によって適時参加。少し甘めの声と、舌っ足らず系のウィスパー感のあるシンギング、ハープ弾語りスタイルなどなど、概ねジョアンナ・ニューサム辺りに近似するアシッド・フォーク調サウンドを展開。ハープのリフ&フレーズ、アルペジオを基調に、ヴァイオリン、クリア・トーンのエレキ・ギター、パーカス&ドラムが装飾を施し、音響系の要素を内包したエレクトロニクスやデヴァイスも薄く絡む感じで、ボーカルはそれなりにクッキリしているものの、全体がくぐもり感十分の淡い郷愁感に収束。この、私小説的な文学的佇まいの内省感としつこくない情感のダイナミズムは見事で、どこか慈しむように触れないと壊れてしまうような儚さが、ある種の美しさとして結実している感じ。ほとんど音響系の要素を絡めないジョアンナとは、必ずしも同じ傾向のサウンドではないが、ともかくもウソのないリアルな存在感がジョアンナに通底する印象で、流していてとても心地好い好盤と思う。素敵!。
輸入盤
(Acid Folk/SSW,Psyche,Progressive / Digi-Pack CD(2022) / Keeled Scales/USA)