USAのオレンジ・ツイン・レコードからのリリース。シビル・ベイヤーは、ヴェム・ヴェンダース監督映画「都会のアリス」等に出演していたドイツ人女優で、本作は70年~73年にかけてホーム・レコーディングされていた音源を、息子のロビー・ベイヤーがCD化した発掘音源。ほぼシビル1人によるアコースティック・ギター弾語りで、友人とのアルプス地方への旅行の後に少しずつレコーディングしていったらしく、その旅行の印象をモチーフにした曲が多いようだ。非常に淡々とした内省感満点のサウンドで、囁きと呟きの狭間を行くシンギングや、倍音の多いくぐもった声、ゆったりとした曲調、薄曇り的なアンバーな雰囲気は、概ねヴァシュティ・バンヤンに近似する印象。マイナー展開の曲が多く、その意味ではヴァシュティよりアンニュイというか、種類の異なる郷愁感を放っていて、初期ジョニ・ミッチェル辺りに通じるクールさやシンガー・ソング・ライター的聴きやすさも同居。全体に、大陸的な大らかさと個人的な影が独特のマッチングで交叉する淡い情感は、友人との旅行がある種の傷心旅行だった可能性を示唆している感じで、ヘロインやマリファナ辺りの香りもそこはかとなく漂う。控え目なストリングスが入るラスト・ナンバーも違和感がなく、淡々と内省的なタイプの女性ボーカル・アシッド・フォークとしてかなりの好盤と思う。ともかくも、確固としたイメージと共にある種の世界が立ち上り、確実に空気の色と時間の流れが変わる非常に心地好いサウンド。
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輸入盤/デッドストック入荷
(Acid Folk/Psyche,SSW / Jewel-case CD(2006) / Orange Twin/USA)