ドイツ/EUのピルツから、21年新規リマスター&見開きデジスリーヴでのリシュー。ヘルダーリンは、デュッセルドルフ近郊のヴッパータール出身のグループで、18世紀ドイツ・ロマン派の詩人フリードリヒ・ヘルダーリンの名を冠する名前通りの、中世的古楽色とサイケ・プログレ色を融合させたアシッド・フォーク的サウンドの初期から、次第にロック色が強くなる後期へとサウンドが変遷した。本作は、72年にドイツのピルツからリリースされたファースト・アルバムで、邦題は確か「ヘルダーリンの夢」。メンバーは、ナニー・デ・ルイヒ、クリスチャンとヨハンのグルムコワ兄弟、ノップス・ノッペニー、ペーター・カセベルク、ミヒャエル・ブルッヒマンの6人編成で、曲によってブローゼルマシーンのペーター・ブルシュとマイク・ヘルバッハ、W&Wのヴァルター・ヴェストラップが適時ゲスト参加、プロデュースはロルフ・ウルリッヒ・カイザー。シンフォニック・プログレの要素が強くなるセカンド以降とは全く趣を異にする、儚く妖しい中世古楽の香りが漂うサウンドで、暗く、重く、幽玄で美しい、弦・管楽器を多用するアンサンブルはアシッド・フォーク色が強く、ナニーのくぐもり感満点のボーカルが独特の情感を放つ。ドイツの黒い森のようにダークで深いが、グリム童話のような儚さと浮世離れしたファンタジックさが同居していて、ともかくも非常に内省的で心地好い。ヘルムート・フリッツの素敵なスリーヴも含め、確実に空気の色と時間の流れが変わる正しくサイケな大好盤と思う。サード・イアー・バンドやベーレン・ゲスリン辺りが好きな人は勿論、アシッド・フォーク愛好家ならまずもって楽しめるのでは。素晴らしい!。
輸入盤
(Acid Folk/Psyche,Progressive / Digi-Sleeve CD(2021 Re-master) / Pilz,Breeza Music/German,EU)